今更感があるかもしれませんが、アニメ『チ。 ―地球の運動について―』を見終えました。一言では表せない物語で、とても考えさせられる内容でした。単純に楽しい、面白いといった感情で直感的に反応するというより、たくさんの要素を見て考える面白さのある作品です。
どんなアニメ?
15世紀のヨーロッパ某国。飛び級で大学への進学を認められた神童・ラファウ。彼は周囲の期待に応え、当時最も重要とされていた神学を専攻すると宣言。
が、以前から熱心に打ち込んでいる天文への情熱は捨てられずにいた。
ある日、彼はフベルトという謎めいた学者と出会う。
異端思想に基づく禁忌に触れたため拷問を受け、投獄されていたというフベルト。
彼が研究していたのは、宇宙に関する衝撃的な「ある仮説」だった――。
TVアニメ「チ。 ―地球の運動について―」公式より
約1分のティザーPVが衝撃的です。
禁じられた研究『地動説』、その異端を学ぶ者は重罪とされ、拷問と処刑を受けます。
約2分の本PV。登場するキャラが増えてます。
チ。は昔のヨーロッパ風の世界観で、禁忌とされる地動説を研究する人たちを追ってゆく形で語られる物語です。
大きく分けて4章あり、メインで語られるキャラが変わりつつ展開されます。
一人の主人公に縛られず、地動説というテーマそのものを主役にしたような視点のお話です。
アニメを見た感想と考察
私が1章を見ている段階では、最後までラファウが主人公として物語が進むと思っていました。
一通り視聴済みの方なら、この5分のまとめ動画が適切で分かりやすいです。
一般的な物語は一人の主役の視点や感情を描くスタイルが多いなかで、『チ。』は客観的というか、まるで世界を俯瞰しているような視点に感じました。
地動説という物語の軸もあり、星空のシーンも多くあるので、その演出の影響も大きいかもしれません。
また、拷問や処刑の表現もえげつないです。人の死が少なからず出てきますが、死を軽く表現しない、痛々しいアニメーションは見ていて苦しくなります。
命をかけてでも研究する、地動説に魅入られたキャラの視点と感情で盛り上げられている所が他の作品にはない魅力で、ここまで大きく話題になった要因の一つではないでしょうか。
登場するキャラクターも、例え死んでも終わりではなく、後世への影響も強く残し物語の終わりまでしっかり存在感を放っています。
生きて伝える者と死んでも残した研究で伝える者、教えを保守する者と先進的な理論を探求する者、この構成は現代社会の経済や政治とも変わらないですね。人間は進化しているようで、全く進化していないような、不思議な感覚を覚えました。
それから、この物語の中では個人的にヨレンタさんに親近感を覚えて共感していました。行動や考え方に同意できる部分が多かったので、かなり感情移入して見入っていました。
その中でも、大好きになった言葉があります。エピソード9で、ヨレンタさんがオクジーさんに言った言葉です。
「文字は、まるで奇跡ですよ。文字になった思考はこの世に残って、ずっと未来の誰かを動かすことだってある。」
エピソード9きっとそれが、何かを知るということだより
コチラのPV第2弾で上記のヨレンタさんのセリフが聴けます。
このセリフは、私自身にもとても響きましたし、物語の大事なものを生み出すきっかけになった重要な言葉でもあると思っています。
本当に、文字は残るんですよ。残せるんですよね。現代でいうなら、出版されている書籍はもちろん、このようなブログやSNSで交わされている文字ですらそうなんですよね。
誰かを動かす可能性のある人間が得ている素晴らしい唯一のものじゃないでしょうか。もはや地動説を通して、文字や言葉に残して紡いでゆくことこそ真理に繋がるような気もします。
もう一つ文字に関して大好きなセリフがあります。エピソード22でドゥラカが発言しています。
「文字は、思考に直接届く表現だ。」
エピソード22君らは歴史の登場人物じゃないより
ものすごく達観した一言を放たれて驚きました。本当にその通りなんですよね。思考に直接届くんです。だから人は言葉を使い、文字を使い、手紙や本に記すという手段を得ているんですよね。
知的好奇心を表現するのに、とても短いけど、的を射ているセリフだと思いました。
そして、『チ。』はこの文字を通して、後継者へと渡り継がれ真理を追求していくので、とても重要な要素だと言えます。
最後に、とても気になっていたタイトルについて考察します。
なぜ漢字ではなく、カタカナで一文字のチなのか。
すでにたくさんの考察や原作も踏まえた解説も出ていますが、私がアニメを見て気づけたのは
チ。とは
地。であり、
知。であり、
血。である。
各エピソードについているタイトルと内容からすると『チ。』には大きくこの3つの要素が含まれて、カタカナ一文字のチになったのではないかと思います。
地。は地動説の地、地面の地、地球の地。
知。は知識の知。文字に残すという要素もここに含まれると考えています。
血。は痛みを伴い、命をかけて行っていること。
そして、。には形通りに星を意味しているのと、記号の意味として人生の区切りを表しているのではないかと思います。
深く考えましたが、作者さんはどう思ってこのタイトルにしたんでしょうね。
案外、あまり深く考えずに直感的に決めた部分もありそうな気もします。
そういった部分も含めて、考察することが楽しいアニメですね。
あとOP曲が物語への没入にぴったりで大好きです。
チ。OP曲「怪獣」毎回聴いていて、クセになる良い曲です。
こんな人にオススメ
まずオススメできない方をあげます。
この3つに当てはまる方にはオススメできません。グロテスクな表現から目をそらしては、この世界観を否定することになりますし、思考放棄して感覚だけで視聴すると理解の難しい物語だと思います。また、見解は分かれるかもしれませんが、宗教的な風習にもある程度の理解が無いと、なぜそうなるのかが分かりにくいかもしれません。
逆にオススメできるのはこんな方です。
宗教的な弾圧や軋轢など、歴史やそれに即した映画や書籍が好きな方はすぐにこの世界観にハマると思います。
ただ、それより重要なのは、言葉のやり取りを見てたくさんのキャラクターが織りなしていく物語を俯瞰して観ることにある気がします。
たくさんの言葉を考察して、一人のキャラだけに捉われず客観視できると、『チ。』はものすごく楽しめるアニメですよ。


私はprimevideoで見ました。
最後までご覧いただきありがとうございます。アニメ、楽しみましょう。

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